出会い

 四月から令和六年度が始りました。昨年来、気候は不順が続いておりますが、過去三年の緊張が遠くなり、現在の安穏は誠に有り難いと思います。

 新年度に入り、学校や社会、そして家庭でも新しい希望を持って旧年度とは異なる歩みが始ります。日本では四月から色々な歩みが一斉に動き出します。それぞれにどの様な機会、チャンスが訪れるか解りませんが落ち着いて着実に歩みたいものであります。

 さて、生きておりますと、好むと好まざるとに拘らず色々な「出会い」があります。人との出会いをはじめとして、知識との出会い、血縁の出会い、出会いと云うのは大抵は初めてであり、そこから様々が始って行く最初であります。

一、    学びの出会い

 私の所では現在「護身法」と云う密教の法を学んでおられる方は、何かの縁でこの法を知り、私がお教えしている事を知って初めて出会われたものであります。

空海―弘法大師が遣唐使として中国へ渡り、帰国して以降、大切に護り、門外不出として弟子にしか伝えて来なかったこの法は、私も縁あって学び、もう五十年近くになります。あらゆる意味で、私の支えになりました。誠に凄いこの法は、中々難しく、簡単には作法も真言や観想も完全に修得するのは難しいですが、真摯に続けて行く事で必ず血肉となり、自分を支えてくれるものになって行きますし、肉体も精神も鍛えあげ強くしてくれる法であります。これも一つの大きな出会いであります。

十数年学んでいる人は、身を護り、祓い、さらに判断に優れた力が身について来ておりますし、未来へと繋がる良い出会いかと思います。

二、人との出会い

 他人との付き合いも出会いから始ります。人間関係は人生の中で最も難しいとされております。それぞれ育った環境も性格も異なって当然でありますから、出会った最初に長く付き合えたり、自分を疎かにせずにいられるのか、即座には解りません。良い人生が送れる様に、上下関係も含めて心大らかに自分の感性も豊かにし、折角の出会いを無駄にせぬ様、賢く生きたいものであります。

三、    肉親との出会い

 子が親を選んで生まれて来るのか、親がその子との血縁を望んで出会うのか、これは全く単なる生れではないと思っています。私が存じ上げている医師の専門は不妊治療でありますが、時折神の世界にも通じる仕事かと思う時があります。何千年と続く血統の歴史の一場面を作る為の治療であります。医師は自らの知識や配慮や優れた技術で行っておられると思いますが、魂の面も含めて考えれば、凄い仕事であると思います。その出会いが、家の歴史を作ります。

 あらゆる出会いを大切に考え、自分を高めて行きたいものであります。しかし何事も固執せず柔軟な姿勢と努力を忘れぬ様に生きて行きたいと思います。

知識との出会いは成長に欠かせぬものであります。一つずつ吸収し栄養にして、厚みのある、浅はかでない、器の大きな人になるべく、努力致したいものであります。